■蘭嶼

台湾・東南海岸沖に蘭嶼という小さな島がある。
そこに住む原住民ヤミ族(タオ族ともいう)の伝統船「チヌリクラン」。
“黒潮”を感じさせてくれる風景だ。
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蘭嶼島は、台湾本島の東南約70キロの海上に浮かぶ。
島の中央は多くが山林で、周囲36キロの海岸線は珊瑚礁に囲まれている。
蘭嶼位在台灣本島東南方約七十公里海上,周長三十六公里,島中央多山林,四周佈滿礁岩。

島に住むタオ族の人々は太平洋と共存した、独自の海洋文化をはぐくんできた。
台東から飛行機で20分、蘭嶼への旅は短いが、そこには台湾本島とはすっかり異なる世界がある。
由於四周環海,居住島上的達悟族人與太平洋相互依存,發展出獨特的海洋文化。
從台東搭飛機約二十分鐘就來到蘭嶼,短短旅程,卻將人帶進了與台灣本島完全不同的時空。


蘭嶼の先住民が自分たちをタオ族と称するのは、蘭嶼を「ポングソ・ノ・タオ(人の島)」と呼ぶ名前の省略形である。
島には七つの村落があり、4000人余りが暮らしている。
タオ族は、台湾本島の先住民と同じオーストロネシア語族に属しているが、島という地理条件によって、先住民文化を最も完全な形でとどめている。
蘭嶼原住民自稱為達悟族(Tao),是蘭嶼(人之島Pongso No Tao)的簡稱,島上有七個村落,四千多人。
達悟人與台灣本島原住民同屬南島語族,由於居地孤懸海中,是全台原住族群文化保存最完整的一族。


春と夏に行なわれるトビウオ祭りは、蘭嶼の伝統文化としてよく知られている。回遊性のトビウオは、神がタオ族にもたらす大切な食物であり、年中行事のほとんどがトビウオ漁に合わせて催される。それらは、独特な暦法を生み出しただけでなく、生活様式、建築、造船などにも独自の芸術スタイルを発展させてきた。
春、夏之間的「飛魚祭」是最為世人熟知的蘭嶼傳統。洄游性的飛魚,是上天賜予達悟人重要的食物來源,全年歲時祭儀多半配合撈捕飛魚的活動運行,不僅醞釀出獨特的曆法和生活方式,在建築、造船、生活器具上也都發展出獨特的藝術風格。

彼らのトビウオ季は、タオ族暦の2月(6~7月)に始まり、同5月(8~9月)にトビウオ漁が終了するまで続く。そこには海洋文化が完全な形で展開されているため、多くの人類学者が研究に訪れる。
每年從達悟族曆二月(陽曆六、七月)飛魚季展開,直到五月(陽曆八、九月)飛魚撈捕活動結束,正是一段完整海洋文化的展現,吸引了許多人類學者前往研究。

中央研究院の人類学者の観察によれば、タオ族の食物の中で高い比重を占める魚類は、食する時期によって分類されている。
季節による分類では、春の魚と珊瑚礁の魚に分けられる。
根據中研院人類學者的觀察,達悟族將食物中所佔比重極高的魚類,依食用時間不同加以分類,從自然時間來論,魚類分成春天魚與礁岩魚。

春の魚とは、トビウオやシイラ、マグロといった、春になると蘭嶼付近へ回遊してくる魚類で、春には主にこれらの回遊魚を捕獲する。回遊魚は、いつもは神とともに天で暮らしているが、春になるとタオ族に食べられるために天上より降りて来て、季節が終わると再び天に帰って行くと考えられている。
したがって回遊魚は神聖なもので、捕獲や食用の際には多くの儀式やタブーが存在する。
春天魚即春天時洄游至蘭嶼的季節性魚類,如:飛魚、鬼頭刀、鮪魚,達悟人春季以獵取這些洄游魚為主。
洄游魚類被認為平日與天神同住於天界,只有在春天才從天上下來供達悟人捕食,季節結束後又返回天界,因此洄游魚類是神聖的,撈捕、食用上,有許多相關儀式與禁忌。


社会的な時期や性別によっても、魚類はいくつかに分類されている。
性別や人生の各段階に適した魚を食べなければならないとされているのだ。おおまかな分類としては、性別に関らず食べてもいい「良魚」と、男性だけが食べることを許される「悪魚」、孫のいる世代の男性だけが食べられる「老人魚」に分けられる。
從社會時間與性別因素上,達悟人又將魚類分成數類,每個人依其性別及社會時間選擇適合的食用魚類。這套分類中主要將魚分為不論性別都能吃的「好魚」、只有男性能吃的「壞魚」,與只有祖父級男性才能吃的「老人魚」。

ほかにも、妊婦、赤ん坊を育てている女性、妻が妊娠中の男性、赤ん坊のいる父親、男児、女児など、人生のそれぞれの時期によって、適する魚が分類されている。
其次還有適合孕婦、哺育幼兒的婦女、妻子懷孕的男子、有哺乳兒的父親、男童、女童等人生不同發展階段食用的魚。

魚類の捕獲や摂取に規則があるだけでなく、漁にとって最も大切な道具である漁船にも、タオ族は複雑な社会規範を発展させてきた。男性はみな船団を中心とする社会組織に属さなければならない。
除遵守獵捕與食用魚產的規範,達悟族也由捕魚的最重要工具──漁船,發展出複雜的社會網絡。比如每個男人都必須參加以船組為主的社會組織。

タオ族の作る独特な船は、スタイルも豊富で、華麗な装飾が施してあり、彼らの芸術的天分を語って余りある。
船は、彫刻の施されたものと、そうでないものとがあり、船には天然材料を用い、赤、黒、白の3色で幾何学模様が描かれている。
而達悟族拼船造型獨特,樣式繁多,裝飾華麗,更展現了達悟人的藝術天分。
拼船可以粗分為平面船和雕飾船,船上的幾何紋樣多塗上取自天然材料的紅、黑、白三色。


完成した船の進水式も、蘭嶼の漁労文化においては重要な儀式である。
1回の進水式には、数100キロに上るタロ芋を費やし、10数頭の豚や小ヤギを屠殺しなければならない。
このように重要な役割を持つタロ芋はまた、儀式化されたタロ芋文化を生み出している。
新船下水亦是蘭嶼整體漁撈文化中的重要儀式。
每回新船下水得消耗上千斤水芋、宰殺十數頭的豬和小羊,由此也開出了高度儀式性的水芋文化。


例えば、親類や知合いの多さによって、植えてもいいイモの量が決定される。そして、新船の進水式に、船上にお供えのイモが並べられたり、家を新築した際にも、屋根の上や家の脇にお供えのイモが置かれたりする。
比如視親朋好友的多寡決定種植芋頭的數量,新船下水典禮須陳列禮芋於船上;新屋落成時,也須放置禮芋於屋頂及屋側。

熱帯海洋性気候に属する蘭嶼は、気温が高いうえに、たびたび台風に襲われる。
そのため集落は、山を背にした海岸沿いの緩やかな坂の上に作られ、冬は暖かく夏は涼しいように住居は竪穴式になっている。
籠罩在熱帶海洋性氣候之下的蘭嶼,天氣炎熱,又位於颱風要衝,因此聚落多背山面海,於海岸平坦緩坡地發展出半穴居式的住屋,房屋冬暖夏涼。

家を建てる前に、タオ族はまず排水システムを整える。
排水口には石が積まれ、外からは見てもわからないような工夫がされている。
母屋の入り口の脇には「背もたれ石」が置かれ、タオ族はよくそれにもたれて、おしゃべりなどをする。
石は家族の人数分だけ置かれ、誰かが亡くなると、石が一つ倒される。
在蓋屋之前,達悟人更預先就做好排水系統,排水口以石頭遮掩,從外觀上很難看出。
主屋入口旁豎著「靠背石」,達悟人常靠坐在石頭前面聊天,一家有幾個人就放幾個石頭,家裡有人過世,就推倒其中一個石頭。


自然をうまく利用し、快適で人間味ある暮らしをするタオ族には、豊かな文化がある。また、火山島の蘭嶼には、変化に富んだ風景が広がる。文化の面でも、自然の面でも、蘭嶼は世界文化遺産に恥じない価値があると言えるだろう。
だが、観光客のもたらす汚染や放射性廃棄物の保存などによって、現代の蘭嶼は世界遺産の汚点になってしまったと、文化建設委員会世界遺産評選委員の目には映っている。
「観光客を制限して、放射性廃棄物をなくす必要があります。そうすれば蘭嶼は、桃源郷の名に恥じない姿に戻ることができるでしょう」と、台湾大学地理環境資源学科の王教授は強く訴える。
善於利用自然形勢營造舒適、人性生活的達悟人,有說不完的原住民文化故事,由火山組成的大、小蘭嶼更有著豐富的火山地景。作為「人文、自然」兼具的世界雙遺產,蘭嶼當之無愧,但在文建會世界遺產評選委員眼中,近世的人為干擾,包括旅遊行為造成的污染與核廢料儲存,卻成為世界遺產的污點。
「必須進行遊客承載量管控、與移除核廢料,蘭嶼才可能符合它世外桃源的美名,」台大地理環境資源系教授王鑫殷切期望。

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by officemei | 2009-08-12 00:45 | ■台灣