■ 台湾:日本語で人生を詠む

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山梨日日新聞2003年6月15日第8面【読書(新刊案内)】 
黄霊芝は日本語で育ち日本語で表現する台北在住の台湾の作家である。1928年に生まれ、日本統治下で17年間過ごし、日本人の学校に通った。
「私は終戦により文盲となった」と、言う。
日本の敗戦により、台湾は中華民国に返還され、政府が日本語を禁止したからだ。しかも、既に文芸の道を歩むと思いを定めていた著者は、表現の手段を禁圧されても、一命を賭して日本語の表現者であり続けた。作家となる夢は絶たれたが、幾多の苦闘の末に、俳句と出会い、1970年に台北俳句会を発足。その活動は今に至るも途切れること無く続いている。
この台北俳句会を土台に、9年の歳月をかけて本書は生まれた。なぜ、こうまで日本語にこだわり通したのか。次の言葉が、その答えであろう。
「日本語でしか自分の世界を展現できなかった数々の台湾の戦前の作家たちの、その後に強いられた唖の無念さが私には堪えられないのである」
その無念さの思いが、「台湾俳句歳時記」に結実されている。その意味で本書は、歳時記の体裁をかりつつ、著者の人生を反映させた文学作品といえよう。

私はこの本をちょうど5年前に台北の永漢書局で購入し読んだことがある。
私の一世代上の台湾人には現代日本人よりも流暢な正調日本語を話す人たちがいて、驚きとともに恥ずかしさを覚えたことも多々あった。
台湾の歴史を学ぶにつけ胸に熱い思いが込み上げてくるのは私だけではあるまい。






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by officemei | 2011-04-04 01:01 | ■台灣