■農村の環境汚染

2006年2月24日
◇不満爆発の導火線に
畑が広がる農村地帯の中に四方をレンガ塀で囲まれた台形状の人工の丘があった。縦約300メートル、横約700メートル、高さは40メートル以上。斜面には大型トラックが出入りできるように道路が設置されている。丘の内側は巨大なゴミ捨て場だ。

北京市中心部から南東約40キロの農村地帯、大興区安定鎮にある「北京市安定ゴミ埋め立て処理場」。96年に操業を開始した。約1500万人の北京市民の生活ゴミを受け入れる主要な公共ゴミ処理施設の一つだ。

外側からは内部のゴミは見えない。環境汚染とは無縁のようだが、雨や雪の日にはメタンガスの悪臭が周囲の村を覆う。

「この10年で井戸水が黒く汚れ、飲めなくなった」。近くの村の男性(45)は話す。環境問題の専門家も「地下100メートル以上掘っても良質な水が出ない。重大な汚染地域だ」と指摘した。この3、4年間に30代の村民6、7人ががんで死亡した。因果関係は不明だが、村民たちは「環境汚染が原因」と信じて疑わない。

急速な経済発展を続ける中国ではゴミも増加の一途だ。全国で1年間に排出されるゴミは推定1・8億~3・5億トン。毎年5~8%の増加率とされる。都市が清潔になる一方、ゴミを受け入れる側の農村で環境汚染が深刻化する現象が全国的に問題化している。

中国のゴミ処理は埋め立てが中心で、汚水を地下に浸透させない対策が重要だ。安定鎮の処理場でも防止対策は取られている。だが、外国では汚水浸透防止層を6、7層設けるところ、中国では1層だけのものが多いという。専門家は「中国では普遍的に地下水汚染問題が存在する」と語る。

農村部に移転した化学工場などによる河川の水質汚染も深刻化している。浙江省東陽市では昨年4月、汚染被害をめぐって、農民と警官隊の衝突事件が起きた。環境問題は社会不安の「導火線」にもなり始めている。

中国政府は昨年11月、今後5~15年間の環境保護事業の指針を示した「環境保護の強化に関する決定」を発表した。飲料水、大気、土壌などの汚染防止のため、地方政府が責任をもって環境問題に取り組むことを規定している。

しかし、環境問題に対する意識を高めるのは容易ではない。安定鎮の処理場前の空き地には、数百メートル離れた場所に駐屯する武装警察部隊が不法投棄した生活ゴミが堆積(たいせき)していた。「部隊はゴミ処理にかかる費用を惜しんで、勝手に捨てている。我々も違法だと分かっているが、どうしようもない」。農民たちはあきらめ顔で話した。
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by officemei | 2006-02-24 14:11 | ■北京