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■農民や労働者の暴動に危機感

■農民や労働者の暴動に危機感_e0094583_17244676.gif5日に開幕する中国の全国人民代表大会(全人代=国会)の政府活動報告で温家宝首相が弱者対策を強調する背景には、相次ぐ農民や労働者の暴動が「政権の安定を脅かす存在となっている」(中国筋)との危機感があるためだ。




「以人為本」(人を中心とする)をスローガンに掲げる胡錦涛指導部のカラーが鮮明に表れるとともに、「先富」(一部が先に豊かになる)から「共富」(共に豊かになる)へ戦略を転換させる第一歩となる。

4日に明らかになった活動報告では、過去1年の実績をアピールする一方で、「長期に累積した矛盾がなお根本的に解決しておらず、軽視することができない新たな問題も起きている」と率直に認めている。具体的には、農民収入の伸び悩みや土地収用をめぐるトラブル、環境汚染、相次ぐ重大事故などを挙げた。

弱者の不満は数字にも表れている。中国公安省によると、農民や労働者による暴動など公共の秩序を乱す「集団的事件」は昨年、前年より約1万3000件多い約8万7000件起きている。
都市と農村の収入格差は78年の2.57倍から昨年は3.22倍に拡大した。深刻化する役人の腐敗は、格差に対する弱者の不満に拍車をかけている。

今年の全人代は、本来なら5年に一度、向こう5年間の中期計画を示す場になるが、活動報告は今年の活動指針に重点を置いた。格差や腐敗に対する庶民の不満が「待ったなし」の状態になった現実を反映している。

活動報告の中では、「三農(農業、農村、農民)問題」解決のために前年より422億元(1元は約15円)多い3397億元を投入するとともに、失業者対策の充実や社会的弱者による訴訟の支援も表明している。
だが、役人の腐敗については、新味のある対策は示していないうえ、海外から批判が出ているメディア規制を改める姿勢も見せていない。政府に対するチェック機能を議会である全人代がどう果たしていくかも注目されている。