■海賊版を殲滅せよ!

インテリジェンスの業界レポート
日本のメーカーにとって、中国市場は非常に魅力的だ。中国国家統計局の中国統計年鑑によると、中国には年間可処分所得1万元(1元=約14.5円)以上の富裕層が約1億5,000万人も存在する。日本の人口以上のマーケットだ。しかし問題もある。知的財産に対する意識の低さだ。平然とコピーを行うため、中国に進出した企業は訴訟に追われることになるのだ。



ホンダは中国の双環汽車が販売しているSUV「S-RV」が、同社のCR-Vに外観がそっくりだとして、2004年に意匠権侵害を訴えた。双環汽車のHPにあるS-RVの画像を見る限り、S-RVはCR-Vに酷似しているように見え、ホンダの訴えは正しいように見える。そしてCR-Vは2002年から中国国家知識産権局より、エクステリアに関する意匠権の特許保護を受けている。意匠権におけるホンダの訴えには根拠があるわけだ。

ところが、である。今年に入り、中国の特許庁に相当する中国国家知識産権局は、ホンダの意匠権を無効として訴えを退けた。中国国家知識産権局はS-RVがCR-Vの意匠権を冒しているかどうかを論じず、新型CR-Vは1995年に発売された旧型CR-Vとデザインが酷似しており、そのためCR-Vにはそもそも意匠権がないと主張、特許保護を取り消した。これにより、意匠権の侵害というホンダの訴えそのものが無効になってしまった。

世界の自動車メーカーはブランド維持のため、ブランドデザインを確立、それを新型にも継承させている。基本的にはどの時代のモデルもデザインが似ているし、似ていなければブランドにならない。旧型と新型が似ているのは当たり前のことだ。しかし中国国家知識産権局の論でいけば、世界中ありとあらゆるメーカーの自動車には意匠権が発生せず、結果デザインを模倣し放題ということになってしまう。今回のことで、中国でビジネスを行う上で意匠権や著作権についてクリアにすることがどれほど困難かが明らかになったわけだ。

車だけではない。Jetro北京センター知的財産権部の「ニセモノ写真館」には、中国で見つかったコピー商品がずらりと並んでいる。これを見れば、中国のコピー商品が、電動ドリル、ゲーム機、アイロン、乾電池、シャープペン、自動車部品などありとあらゆる商材に及んでいることがわかる。

コピー商品の代表といえば、DVDやCDの海賊版だ。日本のアニメの70%、テレビドラマや映画はほぼ100%が海賊版であり、日本のコンテンツメーカーは著しく利益を損ねている。

2003年度に開催された経済産業省の「コンテンツ産業国際戦略会議」によると、2001年度の海外市場規模は3,258億円だが、一方でアジア主要4カ国(中国、台湾、香港、韓国)における海賊版市場規模は9,805億円にも上った。コンンテツの正規ルートの約3倍の市場が海賊版で占められているのだ。

海賊版は安い。DVDの海賊版はVCDという規格で販売され、1本に2~3本の映画やドラマが入ってわずか150~200円である。正規品を同等の価格で販売することは難しい。

日本のコンテンツホルダーが中国でも正式販売を申請しても、なかなか認可が降りず、その間に海賊版が市場を席巻してしまう。なかには海賊版が先に申請してしまい、日本の正式版が海賊版扱いされるという、倒錯した事態も起きている。

海賊版の横行を防ぐため、2004年9月から、海外向けコンテンツにはコンテンツ海外流通促進機構(CODA)によるCJマークが貼られるようになった(ただし会員制)。これは正式版である証で、CODAは会員企業の海賊版を摘発、海賊版の製造・販売を行った現地法人に対して、確実な懲役刑を求めている。

CODAの活動は確実な成果を挙げつつあり、香港、台湾、中国の各国警察と連携、2005年1年間で839件を摘発、156名を逮捕、251万1,834枚の海賊版を押収している。1988年から2004年までの海賊版の押収枚数が43万1,231本であることからみれば、これは大きな成果だ。

中国市場でのビジネスはけして平坦な道のりではない。そのことを理解し、違法コピーに泣き寝入りせず、CODAのような組織とともに地道に訴訟を重ねていくことだ。それが被害を最小限に食い止め、ひいては中国市場を広く開放していくきっかけになるのだ。
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