■住宅事情

中国 マンション高騰で若者たちが結婚できない?
沸騰する中国経済は中国に繁栄をもたらし、中国の生活水準は日々上昇していると言われて久しい。テレビで紹介される上海のテレビ塔「東方明珠タワー」を背景とする美しい夜景は、中国の繁栄を代表するかのごとく強烈な印象を我々の脳裏に焼きつけている。




ところが、その繁栄する都市の生活も決して楽ではないのが実情である。中国の不動産アナリストである沈暁傑の「中国不動産の重大批判」という論文がある。その前書きに「妻をめとるには一体いくら必要か」という記述があり、この質問を各地の青年に問い合わせた結果が示されている。ここで対象となっているのは大学卒で中産階級の階段を上り始めた青年たちである。
妻をめとるには飲まず食わずの10年労働が必要
南京では70万元(1元=約14円)かかるという。その内訳は80m2のマンション(m2単価=6000元)48万元+内装費用5万元+家具・家電3万元+乗用車10万元+新婚旅行(東南アジアあるいは雲南省や海南島)1.6万元+2年間の恋愛費用(食事、娯楽、贈り物等)2.4万元。ただし、結婚式の費用はご祝儀と相殺とみなして含まず。
男側の家の資産が20万元、男の年収が5万元として計算すると、南京では「妻をめとるコスト=男側の家の破産+男の飲食を忘れた10年間労働」となる。乗用車と新婚旅行の費用合計10万元を除くと約60万元となるが、これは決して特別なケースではなく、ごく普通のカップルの場合だそうだ。
南京が60万元ならほかはどうか。北京では85万元(80m2のマンション購入費は64万元)、上海では100万元(同80万元)、広州と杭州では85万元(同64万元)となる。
すべては1998年の住宅改革に始まる
中国では1970年代の結婚は友人に飴を配って両家で一緒に食事をするだけで、住居は古くて小さいながらも職場が割り当ててくれたので、100元もあればすべて事足りた。70年代後半から80年代初期に、3種の神器(腕時計、自転車、ミシン)と簡単な家具があれば結婚できた時代があり、その後は数百元時代が到来する。80年代中頃から、毎年のようにテープレコーダーやテレビといった家電品が加えられ、招宴の規模とレベルは拡大・上昇、結婚コストはついに1000元を突破して万元時代へ。ただし、この時代までは職場が社宅を割り当ててくれ、その家賃も月に数元であったため、当時の一般人の結婚コストは数万元前後に納まっていた。
こうした良き日が終結したのは1998年の住宅改革である。これ以降新たに住宅を必要とする者は職場の一部補助は提供されるものの、自力で購入することを余儀なくされたからだ。人々の収入レベルは過去の数十元から数千元と100倍になったものの、結婚コストは百元から50万元以上と実に数千倍に跳ね上がった。中国各地でそれぞれの結婚コストからマンション購入費を差し引くと、その他費用は20万元前後でほぼ一定している。つまり結婚コストの上昇はほとんどが住宅費用の高騰のせいということになる。住宅面積と品質は若干増加・改善されたものの、結婚コストの75%以上を占めるようになった。
お家騒動を招きかねない6-1方式の怖さ
これでは、結婚年齢に達した若者は簡単には結婚できない。それではどうしているのだろうか。上海市不動産取引センターの下部組織が12万組の新婚夫婦を対象に調査した結果では、70%は住宅が買えないなどの原因で父母との同居を選び、残りの30%が新規に住宅を購入している。ところが後者の80%も父母の資金援助に頼っており、しかも中国で今流行中の「6人で1住宅購入方式」だそうである。すなわち、双方の両親が老後のために蓄えたなけなしの資金を頭金として提供し、残金は新婚夫婦が毎月返済する方式である。
この「6人で1住宅購入方式」は地方からの大学生が集中する大都市では普遍的なものとなっているが、子供のために蓄えを吐き出した両親たちの将来は大きな問題である。住宅ローン返済に追われる子供たちが両親の老後の面倒を見るだけの余裕を持てるかは極めて疑問である。しかも対象は双方の両親であることを考えると、この期待は裏切られる可能性が高い。
一方、同居組は果たして嫁姑問題に悩むことがないのだろうか。いや、私の経験から言って、お互いに自己主張の強い中国人同士が嫁姑となれば、両者による冷熱織り交ぜた激しい戦いの日々が繰り返されていると想像される。 中国の各地を訪問すると至る所でマンション建設が進められており、その販売は順調であると喧伝されている。しかしながら、その順調さの中にこうした若者達の苦悩を読み取らないと中国を理解することは難しい。
[PR]