■ロケットの予算はあるが、「黄害」防止の対策は後回し

e0094583_20193696.gif世界鑑測 中国・キタムラレポートより

ある資料と書いてあるだけなので、具体的に何の資料か分からないが、そのある資料によると、中国では毎日平均して3000トンもの糞尿の混じった汚水が列車から線路にまき散らされており、祝日や休日ともなれば列車が毎日直接に排出する糞便の総量は1万トンを超すという。




中国の鉄道総延長は7万km以上、毎年の運送旅客累計は11億人以上である。中国ではここ数年中国正月である「春節」や5月のメーデー休暇、10月の国慶節休暇を「黄金週」(ゴールデンウイーク)と位置付けて1週間程度の連続休暇を設定しているが、この期間には実家への帰郷や観光旅行に民族の大移動が繰り広げられる。

特に春節の列車の混み具合は並大抵のものでなく、2006年の春節休暇の1週間では、毎日の旅客累計は400万人にも及び、春節期間全体の旅客累計は1億人以上であった由。これだけの人間が列車に乗れば、毎日1万トンという糞尿総量もある話かもしれない。

年間の糞尿総量は約110万トン

中国人を日本人と比べると相対的に食べる量が多いので、自ずと排出する量も多い道理。専門家によれば、1人が毎日500グラムの糞便と1500グラムの尿の計2000グラムを排出する前提だと、鉄道旅客数から考えて、少なくとも毎日3000トンの糞便が線路に撒き散らされているという計算になる由。これを年間365日で計算すると、なんと年間の糞尿総量は約110万トンにも達する。

まさに「黄害」天国と呼ぶにふさわしい規模である。もっとも、かつては日本も列車のトイレは糞尿を直接に線路に垂れ流す方式であり、現在の循環式や真空式になったのは1970年代以降のたゆみなき技術革新の成果であると言える。
さて、中国の列車は乗客の人数が多いことから、客車の編成が非常に長く、12~16両前後ある(貨物列車では50~60両の貨車が連結されていることも珍しくない)。中国の普通客車には1車両にトイレが前後に各1つあるのが普通なので、1列車には約30のトイレがある勘定になる。一方、中国全体で考えると客車は約4万両あるので、1車両に2つのトイレで考えると客車のトイレの総数は8万個となる。既に主要7路線の一部の列車には密閉式容器が取り付けられている由だが、国威発揚のための有人宇宙船打ち上げや軍備増強の予算はあっても、「黄害」防止のための鉄道トイレ改造予算はあまりないらしい。
高速運行中の列車から糞尿が排出されると、糞尿は霧状の微粒子となって飛散し、車内の乗客や乗務員にも降りかかるが、一番被害の多いのは鉄道沿線の住民である。列車の速度と風速や風向きにもよるが、糞尿の微粒子は四散して、線路から相当離れた場所にまで到達する。乗客には病気を抱えている人も多数いるので、大腸菌のみならず、各種の病原菌、更には、中国ではまだ普遍的な回虫類も、微粒子には含まれているはずで、「黄害」が各種疾病の原因になっている可能性も想定できる。

鉄道路線のそばには寄らない方がいい?

これに加えて、中国の列車の乗客は窓からやたらとゴミを捨てる習性を持ち合わせている。この結果として出現したのは、線路の両側に途切れることなく続くゴミ線路。糞尿のみならず、あらゆる種類のゴミを捨てられる沿線住民にとっては、悪臭と病原菌とゴミで正直やりきれないと思うが、慢性化してしまっているのか、こうしたことに対する苦情が出ているという話はあまり聞かない。

但し、これは今まで言える環境にないので我慢していただけで、徐々に育ちつつある人権意識の高まりとともに、大きな問題に発展する可能性は大きいのではないだろうか。とにかく、中国に行ったら鉄道線路のそばには寄らないことをお勧めする。
 
ところで、広東省の広州市はいまだに市内を流れる珠江では水泳ができると水清きことを誇っているが、珠江では毎日漁船から流出する糞尿の量が2000トンにも達しているとの報道があった。広州に駐在経験を持ち、珠江の汚染状況を目にしてきた筆者は、よくもまあ、あんな汚れた水の中で泳ぐ人がいるものだと感心することしきり。

漁船のトイレは糞尿を直接珠江に排出しており、既に何十年も何百年も続いていることで習慣となっているものだが、もはや珠江には大量の糞便が浮遊物となって漂流している状況で、広州の漁業を監督している広東省漁政総隊広州支隊は、漁船に簡易便器を常備するよう呼びかけている由。

全国の鉄道の糞尿総量が1日3000トンで、珠江に流入する糞尿の総量は一日2000トン、恐らく後者の数字が「白髪三千丈」の類で誇大なのだと思うが、とにかく中国のことゆえ、固いことを言わずになるほどと読んで頂きたい。
中国諸都市で糞尿がどう処理されているのかは、また別の機会に譲るが、大都市を除き、その大部分は屎尿処理場が機能せずに河川に垂れ流されているようである。書いている間に何となく臭ってきたので、この続きは機会を見て書くことにしたい。
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