■日中戦争70年

e0094583_2044340.gif毎日新聞 12月27日
来年は日中戦争の発端となった1937年7月7日の盧溝橋事件や12月13日の南京虐殺事件から70年の節目の年だ。中国では既に映画やイベントなどが多数計画されているが、反日感情が再燃するのではないかと中国外務省をはじめ関係機関は神経をとがらせている。

中国江蘇省南京市で13日、南京虐殺事件から69周年の記念日に合わせてサイレンが鳴り響いた。工事のため閉館している「南京大虐殺記念館」の前庭で追悼集会が開かれ、国内外から約3000人が参列した。例年通りの大規模な記念行事だが、70年後の来年は、更に関連行事が増える。

この「南京大虐殺記念館」は、来年12月13日に3倍の広さに拡張される。来年末には事件の被害者の名簿がまとめられ、初めて出版されることも決まった。

特に注目を集めるのは、南京虐殺事件を描いた映画3本の製作だ。
中国映画「南京!南京!」は来年1月から撮影が始まる。第17回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞した「可可西里(ココシリ)」の陸川監督が、メガホンを取ることでも期待は高まっている。

また、盧溝橋事件から極東国際軍事裁判までの歴史を描いた香港人監督が製作する「日記」は来年末に上映される予定。ハリウッドと江蘇省文化産業集団の製作する「南京浩劫」は、撮影セットの建設が始まった。

映画は3本とも、従来の中国戦争映画にありがちな旧日本軍の残虐性を強調するものではない。娯楽映画になじんだ一般の中国人にとって、歴史映画への関心は低く、人間の心理と史実の描写に力点が置かれている。

これは、観客動員力を高める狙いのほか、中国政府が05年4月の反日デモ以降に採用した「客観的な歴史観」を反映している。

「05年の反日デモは大きなきっかけだった。正しい歴史教育をしなければ、偏狭なナショナリズムに陥る可能性が高い。客観的で、正しい歴史観を若い人に教えていくべきだという考えが、中国政府の中で広まった」と中国の日中関係専門家は解説した。

この専門家によると、反日デモが収束後、ドイツ、ポーランド、イスラエルなどに駐在する中国の外交官が、各国の歴史記念館を視察して比較検討した結果、「中国の歴史記念館はイデオロギー色が強すぎて、時代遅れだ」との認識に至ったという。

これを受けて中国政府は、日中関係における歴史認識について(1)中国人だけが戦争被害者でなく、日本人も被害者の立場にある(2)戦後の日本による平和の歩みを認める--などの方針を確認したという。

しかし、中国にとって抗日戦争は新中国建国の基礎である。中国共産党の求心力が低下する中、党の威信を高めるため繰り広げられる宣伝活動では、抗日戦争がクローズアップされることが多い。節目の年の来年は、抗日戦争を取り上げる機会が一層増えるとみられる。日中間の政治的な雰囲気によっては、反日感情を呼び起こす可能性もある。

こうした日中関係に配慮して、映画「南京!南京!」では、多くの日本人に出演してもらうため役者の募集を始めるなど、日中協力のイメージアップを図っている。

一方で中国の映画関係者は「いろいろな情報が流れて混乱している。メディア対応は現在、一切しないことにしている」と取材を拒否した。日中間で未来志向の歴史認識を打ち立てる努力がようやく始まった重要な時期でもあり、神経質になっているようだ。
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