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■凛として生きる

「胡同(フートン)の理髪師」を海賊版DVDで観賞。
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「剃頭匠」(胡同の理髪師)の舞台は、映像から察するに故宮の北側(北海公園と景山公園周辺)あたりの胡同。

年々北京の下町・胡同が取り壊されていくなか、その胡同に住む老理髪師の日常を淡々と描いている。

主人公のじいさん(93歳)は毎朝6時に起き、きまって5分遅れるゼンマイ時計を5分進める。
ポケットに常に櫛を入れ、白髪を梳く。
老いてなお、こざっぱりと身だしなみを整えている。
カレンダーに書きこんだ訪問予定をチェックし、三輪車に乗って古くからのなじみ客をまわり散髪と顔剃りをする。
午後は隣人たちとマージャンを楽しみながら世間話をし、そして決まって夜9時には床に就く。

じいさんはもう、80年も散髪屋をしてきた。
かつては店を持ち、国民党軍の傳作義将軍や京劇の梅蘭芳など著名人、権力者たちの散髪をしたこともある。
そんなじいさんが、「権力者も普通の人も、金持ちも貧乏人も、人生は一度きりだ」、というくだりは味わい深い。

北京のまちは古くからある胡同を強制的に取り壊し、再開発を進めている。
じいさんの住まいにも市役所から測量にやってきた。
担当者が解体を意味する「拆」とペンキで書くところを「折」と書いて帰ろうとすると、じいさんは「ちゃんと書け、いい加減な仕事をするな」と文句を言うところもじいさんの生き方が滲み出ていた。

知り合いが相次いで亡くなっていく。
凛とした生き方を貫こうとするじいさんにも、やがて死と向き合う日がやってくる。
残り少ない時間をどう生きるか。

この映画を観て、「老い」と如何に向き合うかを考えさせられた。
私はまだまだ若いと自分では思っているが、やがてくるその時までどう処すべきかを、そろそろ考えておかねばならない年齢になってしまった・・・

この映画、主人公である93歳のじいさんやその他のキャストは殆ど素人(胡同の住民)だそうだ。
演技力を超越したリアリティを感じる。
若い人には退屈かもしれないが。


by officemei | 2009-01-23 03:36 | ■北京