■新婚住宅

旧暦の文化が残る中国は今年、1年385日、13カ月のめでたい年である。立春が一度もなかった昨年は、俗に「寡婦年」と呼ばれ、結婚を延期するカップルが続出した。その反動で今年は結婚ブームだ。

このため昨年の上海の結婚件数は10万組だったが、今年は15万組と予想されている。披露宴を行うレストランやホテル、結婚写真の専門店、宝石店、旅行会社は大繁盛だ。中国ではこれに加えて、不動産業も婚礼ビジネスに名を連ねる。

「新婚住宅(中国語・婚房)」。中国では今、結婚する際に住宅を購入するのが当然となり、こんな新語が生まれた。

「私も今年5月に結婚しました」と笑顔で語るのは、上海で不動産事業を展開する「住吉不動産」営業部長の周敬虹さん(34)。結婚のため上海市内に125平方メートルのマンションを購入した。

家庭の重要性を強調する儒教の影響からなのか「中国人にとって住宅は一番大事」と周さん。共働きが一般的な中国だが「住宅を用意するのは男性というのが伝統的な考え方だ」と語る。

「家が買えないから結婚できない」と言う中国人男性は非常に多いが、結婚相手を見つけられない時の言い訳ではないらしい。周さんは「家は最低条件。上海人の女性は家も買えないような男性を結婚相手とは見なさない。男性はそれをひしひしと感じている」という。

豊かな社会で育った一人っ子世代が今、適齢期を迎えている。そんな若者たちにとって、賃貸マンションや古いアパートなどは受け入れがたい。購入するのは新築マンションか新品同然の中古マンションが多い。価格は80万~150万元(約1160万~2175万円)が中心で、2LDKか3LDKの100平方メートル前後が上海の相場だという。

大卒初任給は月給3000元(約4万3500円)前後が「まあまあ」と言われ、何年間か働いたくらいでは住宅購入は無理なはずだ。

「実際は男性の親が必死にためたお金」と周さんは明かす。男の子が生まれたら、将来の住宅購入に備えて家庭の収入の3分の1から半分を預貯金に回し、食費などの生活費を極力切り詰める。これが上海のごく普通の家庭だという。

近年は経済力のある若者が増え、新婚夫婦が親の負担を一部賄うケースも増えつつある。しかし「住宅購入は男の義務」という伝統的な考え方は、住宅価格が毎年20%前後上昇してきた上海で暮らす人々に重くのしかかる。

周さんは「男はつらいよ、です」とため息をついた。(毎日新聞 06/08/31より) 
by officemei | 2006-08-31 08:58 | ■上海